A table of natural wines / 19 July 2026

Five
Bottles,Five Stories.

軽やかな泡から、世界にごく少数しか届かない特別な白まで。今夜の5本を、味わいだけでなく、その土地と作り手の物語から紹介します。

テーブルに並んだ5本のワイン TOKYO · SUMMER 2026
ヴェルデラーメ 2022のボトル
WEB PRODUCT IMAGE · VECCHIO CONSORZIO 1953
01 · Emilia-Romagna

ヴェルデラーメ 2022

Verderame · Vecchio Consorzio 1953

¥3,630

ピアチェンツァの丘から届く、春にもう一度目を覚ます泡。

Style
白・微発泡・辛口/750ml
Grapes
トレッビアーノ、オルトルーゴ、ソーヴィニヨン
Taste
白い花、青りんご、柑橘の皮。きれいな酸と細かな泡。
Place
イタリア/エミリア=ロマーニャ
秋色の葡萄畑が丘一面に続く、ピアチェンツァ県ヴァル・ティドーネの風景
THE LANDSCAPE · VAL TIDONE, COLLI PIACENTINI PHOTO: ENOTECA REGIONALE EMILIA-ROMAGNA
Where is it? イタリア北部、エミリア=ロマーニャ州のいちばん西。

ミラノから南東へ、ボローニャへ向かう途中にあるピアチェンツァ。その市街地から南へ上った丘陵地帯がコッリ・ピアチェンティーニです。地図の印は、葡萄畑が広がる丘の位置の目安です。

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Place · 土地

アペニン山脈の麓、ピアチェンツァの丘

舞台はエミリア=ロマーニャ州の西端、ロンバルディアとの州境に近いコッリ・ピアチェンティーニ。平野からアペニン山脈へ向かって葡萄畑がせり上がる土地です。この一帯では20年ほどの間に葡萄畑が約3分の1も減少しました。ヴェルデラーメは、失われつつある丘の農業と、その土地の日常酒を残すために生まれています。

Grapes · 品種

地元品種オルトルーゴを中心にした、丘のブレンド

オルトルーゴはピアチェンツァの丘と深く結びついた白葡萄。きりっとした酸と素朴な軽快さを持ち、土地では昔から発泡性の白に使われてきました。そこへトレッビアーノのまっすぐな飲み心地と、ソーヴィニヨンの青い柑橘やハーブの香りが重なります。

In the glass · 味わい

濁りを残した淡い麦わら色。泡は細く、味はからり

青りんごとレモンの皮、白い花、熟した核果のほのかな香り。口に含むと細かな泡が舌を軽く持ち上げ、しっかりした酸が後口をさらりと切ります。発酵由来の濁りも味わいの一部。冷やすほど快活に、少し温度が上がると果実のやわらかさが見えてきます。

Maker · 作り手

葡萄を「適正な価格で買う」ことから、畑の未来をつくる

マッシミリアーノ・クローチとピエトロ・ガッツォーラは、環境に配慮して育てられた地元の葡萄を農家から適正価格で購入し、畑の放棄を防ぐ仕組みをつくりました。醸造は土地の酵母に任せ、清澄剤も温度管理も使わない低介入。秋の寒さで止まった発酵が、春の暖かさでボトルの中でもう一度動き出す――ピアチェンツァに古くからある再発酵の知恵を現代につないでいます。ティツィアーノ・カルボーニのラベルも、丘の農村史と二つの家族の物語が着想源です。

旧農業組合の建物を開けるマッシミリアーノ・クローチ
Producer portrait マッシミリアーノ・クローチ かつて地域の農業組合だった建物を、醸造と共同体再生の拠点へ。 PHOTO: © LUCA MARTINELLI / ALTRECONOMIA
Pairing
生ハム、フリット、天ぷら、餃子
Serve
7〜9℃
ス・キ・ヌ・リ 2023のボトル
WEB PRODUCT IMAGE · DE VINI
02 · Loire

ス・キ・ヌ・リ 2023

Su Ki Nu Ri · De Vini / Christophe Bosque

¥3,960

火山由来の土が生む塩気。寿司のとなりで、静かに輪郭が立つ白。

Style
白・辛口/750ml/亜硫酸無添加
Grape
ムロン・ド・ブルゴーニュ 100%
Taste
みかん、すりおろしりんご、洋梨。丸い酸とほのかな塩気。
Place
フランス/ロワール
大西洋に近いナント周辺、ミュスカデの葡萄畑が広がる風景。スマートフォンでは収穫した白葡萄を運ぶ場面
THE LANDSCAPE · NANTES VINEYARD, LOIRE-ATLANTIQUE PHOTO: VISIT NANTES VINEYARD · MOBILE: © JONATHAN SARAGO
Where is it? フランス西部、ナントから南東へ。大西洋の風が届くミュスカデの中心。

ロワール川が大西洋へ注ぐ河口都市ナント。その南東、セーヴル川沿いのゴルジュ一帯に畑があります。ブルゴーニュよりずっと西、海に近い冷涼な白ワインの産地です。

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Place · 土地

大西洋へ流れるロワール川、その河口に近いミュスカデの地

葡萄が育つのはナント近郊のメドン・シュール・セーヴル。ロワール川の支流に沿って畑が広がる、海の気配を感じる白ワインの産地です。畑の下にあるのは「ガブロ」と呼ばれる斑れい岩。地下深くでマグマがゆっくり冷えて生まれた黒い火成岩で、この土地らしい引き締まった輪郭と塩気をワインに与えます。

Grape · 品種

ムロン・ド・ブルゴーニュ100%。静かな葡萄だから、土地がよく見える

ミュスカデの名で親しまれるこの葡萄は、派手な香りを前へ押し出すタイプではありません。そのぶん、酸の形や土壌由来のミネラル感が素直に表れます。この一本では、柑橘だけでなく、すりおろしたりんごやメロンのような丸い果実味が現れ、親しみやすさにつながっています。

In the glass · 味わい

温州みかんの香りと、洋梨へ続くやさしい余韻

色はほのかに緑を帯びた淡い黄色。最初に温州みかんとメロン、すりおろしたりんごの甘い香りが立ちます。味わいは辛口ですが、酸は尖らず丸みがあり、果汁をそのまま飲むように自然。終盤にほのかな塩気と洋梨の上品な風味が残り、刺身や貝の甘みを邪魔せず引き立てます。

Maker · 作り手

地下に埋めたナント製タイルのタンクで、ワインを急かさない

クリストフ・ボスクは自然派の造り手を支える仕事を経て、2017年にゴルジュで小さな醸造所を始めました。葡萄はすぐに圧搾し、野生酵母で自然発酵。熟成には、土地に埋めたナント製タイルのタンクを使います。清澄、濾過、補糖を行わず、亜硫酸も加えない。何かを足して形を整えるより、健全な葡萄とガブロの土地が持つ味を、そのままボトルへ運ぶ造りです。

テーブルでワインを紹介するクリストフ・ボスク
Producer portrait クリストフ・ボスク ドメーヌ・ド・ラ・セルパンティエールで経験を重ねたのち、ゴルジュに自身のセラーを構えました。 PHOTO: LA PIPETTE / CANALBLOG
Pairing
寿司、刺身、貝、カルパッチョ
Serve
9〜11℃
フラウ・ヴェルト 2022のボトル
WEB PRODUCT IMAGE · VON DER VOGELWAIDE
03 · Wachau

フラウ・ヴェルト 2022

Frau Welt Blanc · von der Vogelwaide

¥9,900

購入時に伝えられた日本入荷は、わずか80本。

Style
白・辛口/750ml/フラッグシップ
Grapes
リースリング40%、グリューナー20%、ノイブルガー20%、シャルドネ20%
Taste
黄りんご、熟したレモン、蜜蝋、ナッツ。絹のような厚みと塩気。
Place
オーストリア/ヴァッハウ
ドナウ川と石垣の葡萄畑を見下ろすオーストリア・ヴァッハウの風景
THE LANDSCAPE · WACHAU, DANUBE VALLEY PHOTO: DONAU NIEDERÖSTERREICH · MOBILE: © BARBARA ELSER
Where is it? オーストリア北東部、ウィーンの西。ドナウ川が山あいを抜けるヴァッハウ。

ウィーンからドナウ川を約80kmさかのぼった渓谷です。川の両岸に石垣の段々畑が続き、地図の印はフラウ・ヴェルトの冷涼な葡萄を支えるシュピッツ周辺を示します。

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Place · 土地

冷涼なシュピッツと、暖かなアルンスドルフ。二つのヴァッハウ

ドナウ川沿いの急斜面に石垣の段々畑が続くヴァッハウ。フラウ・ヴェルトには、冷涼なシュピッツァー・グラーベンと、より暖かなヨハンザー・ベルクの区画が重なります。主な土壌は角閃岩と花崗閃緑岩。痩せた急斜面でゆっくり熟した葡萄が、熟度と冷たい鉱物感という二つの表情を持ち込みます。

Grapes · 品種

4品種を重ね、単一品種では描けない奥行きをつくる

リースリングの張りと柑橘、グリューナー・ヴェルトリーナーの白胡椒と骨格、ノイブルガーのやわらかなナッツ感、シャルドネの丸み。2022年はそれぞれを40%、20%、20%、20%で組み合わせています。品種の名前を当てるためではなく、ヴァッハウの斜面を一枚の風景として見せるためのキュヴェです。

In the glass · 味わい

黄りんご、すもも、蜜瓜。最後はレモンと塩へ

黄りんごやリングロッテと呼ばれる黄色いすもも、蜂蜜を思わせるメロン、野のハーブ。口当たりはジューシーで絹のように滑らかです。80%を小さな古樽で仕込み、澱とともに1年半熟成することで、香ばしい木と蜜蝋の陰影が加わります。それでも重くは終わらず、細いレモンの酸と塩気が長く残ります。

Maker · 作り手

畑を持たない二人が、街にポスターを貼るところから始めた

ダニエル・フォーゲルヴァイドとミヒャエル・ドナバウムが2019年に始めたとき、自分たちの畑はありませんでした。二人は「急斜面や放棄された畑を探しています」と街にポスターを貼り、手作業でしか守れない区画を一つずつ再生。ダニエルはコント・ラフォン、シャトー・パルメ、ジャン=ルイ・シャーヴなどで経験を積み、ミヒャエルは地元のワイン家系に育ちデザインを学びました。名前は中世の詩人ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデの詩に由来します。購入時に案内された日本入荷は、わずか80本です。

フォン・デア・フォーゲルヴァイデのダニエル・フォーゲルヴァイドとミヒャエル・ドナバウム
Producer portrait ダニエル・フォーゲルヴァイド & ミヒャエル・ドナバウム 放棄されかけた急斜面を探し、自分たちの手でヴァッハウの畑へ戻していく二人。 PHOTO: © IAN EHM / FRIENDSHIP.IS · VON DER VOGELWAIDE
Pairing
肉の煮込み、シュニッツェル、貝、仔牛のクリーム煮
Serve
11〜13℃
リトロッツォ・ビアンコ 2024の1リットルボトル
WEB PRODUCT IMAGE · LE COSTE
04 · Lazio

リトロッツォ・ビアンコ 2024

Litrozzo Bianco · Le Coste · 1 litre

¥4,290

このボトルが出てくると、みんな「夏が来た」と言う。

Style
白〜淡いオレンジ・辛口/1000ml
Grapes
プロカニコ主体、マルヴァジーア、ヴェルデッロほか
Taste
グレープフルーツの酸、淡い果実。水のように軽快で涼しい。
Place
イタリア/ラツィオ
ボルセーナ湖を望む北ラツィオ、火山性の丘陵に広がる農地
THE LANDSCAPE · LAKE BOLSENA, NORTHERN LAZIO PHOTO: © MASSIMO SIRAGUSA / FAI
Where is it? ローマから北へ約100km。トスカーナとウンブリアに近い、北ラツィオの火山湖畔。

地図の印はボルセーナ湖の北岸、レ・コステが拠点を置くグラードリ。古い火山のカルデラに生まれた湖を見下ろす丘に、葡萄とオリーブの畑が広がります。

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Place · 土地

ボルセーナ湖を見下ろす、北ラツィオの火山の丘

畑があるグラードリは、ローマから北へ約100km。古い火山のカルデラに水をたたえたボルセーナ湖を望む土地です。鉄分を含む火山性土壌は水はけがよく、葡萄に鮮やかな酸と塩気を残します。世界的な品種よりも、この土地で長く育ってきた名前の知られていない白葡萄が今も混植されている場所です。

Grapes · 品種

プロカニコを軸に、絶滅しかけた土地の葡萄を一緒に醸す

中心は、トレッビアーノの土地固有の系統とされるプロカニコ。そこへマルヴァジーア、ロシェット、ヴェルデッロ、ペティーノ、ロマネスコが加わるフィールドブレンドです。香りの高さ、酸、果皮のほろ苦さを別々に切り分けず、畑で一緒に育つ葡萄を一つの季節として仕込みます。

In the glass · 味わい

金色に琥珀のきらめき。柑橘、白桃、バジル、火打石

干し杏、青りんご、野の花、レモンの皮。口に含むとグレープフルーツのような明るい酸と白桃が広がり、短い醸し由来のやさしい渋みが輪郭をつくります。最後に塩とバジルのような青さが残る、軽快なのに単純ではない味。よく冷やして始め、温度の変化も楽しみたい一本です。

Maker · 作り手

放棄された3ヘクタールを、葡萄とオリーブの庭へ戻す

ジャンマルコ・アントヌッツィとクレマンティーヌ・ブヴェロンは、アルザス、ローヌ、ブルゴーニュなどの造り手のもとで経験を積み、2004年にグラードリで放棄されていた3ヘクタールを購入しました。野生酵母で発酵し、グラスファイバータンクで短く熟成。清澄も濾過もせず、亜硫酸も加えません。リトロッツォは、その真剣な畑仕事を気軽な1リットルに詰めた日常酒。「このボトルが出てくると、みんな夏が来たと言う」――その言葉がよく似合います。

レ・コステのジャンマルコ・アントヌッツィ、クレマンティーヌ・ブヴェロンと協力者ガエターノ
Producer portrait ジャンマルコ・アントヌッツィ & クレマンティーヌ・ブヴェロン 一日の仕事を終えたジャンマルコ(左)とクレマンティーヌ(右)。中央は友人で協力者のガエターノ。 PHOTO: DIVERSEY WINE
Pairing
ピザ、魚介のフリット、焼き野菜、唐揚げ
Serve
8〜10℃
IKINN 2024のボトル
BOTTLE PHOTO · 19 JULY 2026
05 · Catalunya

IKINN 2024

IKINN · Celler Ros / Paco Ros

¥4,620

宿屋のためのワインから始まった家族の記憶を、百年以上先で結び直す。

Style
淡いオレンジ・辛口/750ml/亜硫酸無添加
Grapes
パレリャーダ、マカベオ、モスカテル、白グルナッシュ
Taste
オレンジとレモンの皮、白い花、スパイス。滑らかで軽やか。
Place
スペイン/カタルーニャ
カタルーニャ南部テラ・アルタの乾いた斜面で葡萄を収穫する人々
THE LANDSCAPE · TERRA ALTA, CATALUNYA PHOTO: TERRA ALTA TOURISM
Where is it? バルセロナから南西へ。エブロ川に近い、カタルーニャ南部の高地テラ・アルタ。

海沿いのタラゴナから内陸へ入った山あいの産地です。地図の印はセラー・ロスの村エル・ピネル・デ・ブライ。乾いた地中海性気候と標高が、葡萄の熟度に涼しい酸を残します。

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Place · 土地

人口約1,000人、ワイナリー7軒、バール5軒の村

セラー・ロスがあるのは、カタルーニャ南部のエル・ピネル・デ・ブライ。小さな村の規模に対してワイナリーが多く、葡萄とワインが暮らしのすぐそばにあります。パコは村のほかの生産者と道具や知恵を分け合い、互いのワインを飲みながら腕を磨いています。大きな産地のブランドではなく、顔の見える共同体から生まれるワインです。

Grapes · 品種

カタルーニャの白4品種がつくる、香りと軽さの層

パレリャーダの細い酸と軽さ、マカベオのりんごを思わせる果実、モスカテルの花と葡萄そのものの香り、ホワイト・グルナッシュの丸み。4品種を合わせることで、香りは華やかでも重くならず、飲み心地には滑らかさが残ります。

In the glass · 味わい

鮮やかな淡いオレンジ。柑橘の皮から白い花へ

オレンジとレモンのゼストが最初に立ち上がり、その奥から白い花と控えめなスパイスが現れます。口当たりは生き生きとして軽く、果実は熟しすぎず滑らか。飲み込んだあともフローラルな香りが細く長く続きます。白身魚だけでなく、サフランやクミン、香草を使った料理にも寄り添います。

Maker · 作り手

タイル職人、独学の醸造家、そして盆栽の先生

ロス家は1860年代、小さな宿で出すためのワインを造っていました。戦争で途絶え、父の代には復興需要に応えるタイル製造へ。そこで働きながら葡萄を育てていたパコは、フランス語の本を読み込み、ほぼ独学で醸造を学び、2019年に家族のワイン造りを再開しました。亜硫酸を使わず、健全な果実と徹底したセラーの清潔さを土台に、適度に酸素を与えて香りを引き出します。盆栽の指導者としてパリへ通う彼の繊細な仕事は、現地のビストロや星付きレストランにも直接届いています。

醸造用プレスの横に立つセラー・ロスのパコ・ロス
Producer portrait パコ・ロス 家業のタイル工場で働きながら独学で醸造を学び、途絶えていたロス家のワインを再生しました。 PHOTO: ALBY SELECT WINE
Pairing
白身魚、パエリア、スパイス料理、ハーブ
Serve
10〜12℃
Tonight's route

飲む
順番

  1. ヴェルデラーメ細かな泡で、口と場をひらく。
  2. ス・キ・ヌ・リロワールの塩気を、魚介と。
  3. フラウ・ヴェルト温度を少し上げながら、深さを味わう。
  4. リトロッツォ夏の夕方のような軽さで、テーブルを戻す。
  5. IKINN柑橘とスパイスの余韻で締める。